カツドウキロク ②
青年海外協力隊として、ドミニカ共和国のダハボン市(西北端にあるハイチ国境の小都市)に派遣されています。 カリブ海に浮かぶ島での、日々の様子を綴っていきます。
2014年12月12日金曜日
141129二国間メルカド①デモ
金曜の朝8時、いつものようにキルシーと国境のメルカドに向かうと、
正面の門の方が、ガヤガヤと騒がしく、前から続いている車の列が全く進まない。
横をすり抜けながら進んでみると、メルカドの正門は閉じられ、内側からはハイチ人が門を開こうと、鉄格子を叩きながら声を上げている。
キルシーが大声で、何かあったのか、と門番のドミニカ人に聞くと、
今日はメルカドは開かないよ! という返事がかえってきました。
裏門の方に回ってみると、少し開いてはいるものの、こちらもドミニカ人の警備員が無理やり門を閉じようとしています。
押し合いながら、ぶつかって、言い争いをしている人も。
ピリピリした空気がただよってきました。
なんか若干危いかも....すぐに引き返し、事務所へ戻りました。
今日のメルカドはどうしちゃったんだろう。
組織のナンバー2のバリエントさんに、何が起きているのか知りたい、とお願いすると、すぐに色々な場所へ聞き込みに連れていってくれました。
まず、国境の税関へ。
ここがだいたい橋の扉の開閉を管理しているようです。今回の件について、バリエントさんが、職員の人に聞いてくれて、橋が開かないのは、ドミニカ側からの輸出品に対して、ハイチ側が突然に関税を200パーセントまで引き上げた為、それに抗議する意味で、ドミニカ側から門を閉ざしている、ということが分かりました。
そして、国境の橋へ。
ダハボン県では、ハイチとドミニカ共和国の国境は、マサクレ川という川で分断されています。そして、川に架かっている唯一の大きな橋には、青くて大きな鉄の門が設置されています。
週に2回、メルカドが開く日には、朝8時に扉が開くと、勢いよく走ってくる人たちがまるで牛の軍団のようにすごい迫力らしい(未だに早起きできず見に行けたことが無い)のですが、今日は門が閉ざされていました。
扉の向こう側には、門が開くのを待つハイチの人達。
そして、沢山のハイチ人が川を渡り、ドミニカ共和国側に入ってきているのが見えました。
沢山の人が頭に荷物を抱えながら、橋から見える位置で川を渡り、メルカドに入っていきます。
本当は、これは密入国ということになります。が、もし三回のメルカドに渡って門が開かないと、ハイチ側の貧しい人達の生活にとって、かなりのダメージになるので、彼らは生きるために、川を渡りメルカドに商売をしに来るそうです。
それを分かっているので、警察や門番の人も見て見ぬふりをしています。
これが許されるのは、一つには、柵で囲まれている二国間メルカドの中でだけは、ビザも不要で、関税なしで自由に商売をしてよい、というダハボンのメルカド制度があるから、メルカドに入る為に川を渡る人達については、見逃してもらえているのだそうです。
そして、ハイチ人が、メルカドの外(ダハボンの市内など)で商売をする為の、正規の商業ビザを得るには5000ペソが必要だと教えてもらいました。彼らの生活は貧しい人だと一日40~50ペソですから、それこそ100日分以上ということになります。それだけのお金を貯めるのが、どれほど大変なことか。
ドミニカ共和国では、5000ペソという金額は、学校に行きながら働く学生の約一カ月分の給料くらいで、ダハボンへ出稼ぎにくる日雇い労働者でも、一日300ペソくらいの収入を得られるので、やっぱりドミニカ側で働くというのは、彼らにとって魅力的な条件なのでしょう。
その後、バリエントさんが、ダハボンの街の中で、ハイチとの貿易に関連する場所へ連れて行ってくれました。
ハイチへの輸出物を運ぶトラック置き場
これらの場所から、毎日50以上ものトラックがハイチへ物を運んでいくそうです。
ドミニカからの輸出品は、ほとんどが食糧(小麦粉、パスタ、プラタノ)などで、他には建材(石、鉄、セメントプラスチック)が多いのではないかという話でした。
ハイチには、何もない。皆が口を揃えて言うことです。
確かに、メルカドでハイチ人が売っているのは、中古の靴・衣類・化粧品・歯磨き粉や鍋・食器等、全部、先進国からの支援物資や、関税フリーで輸入されてきたものばかりです。そして食べ物はほとんど見かけません。
今回の件は、ドミニカ側も輸出の商売ができないことで損失になりますが、食糧が手に入らなくなってしまうハイチの方の、特に貧しい人たちにとって、問題はより深刻なことでした。
ハイチ政府は、マイアミやパナマから輸入した食料品を国内で買わせたかったようですが、そうなると、彼らの食費が跳ね上がってしまう為、ハイチでは、ドミニカからの輸入品への関税の値上げに対して、デモが起きていたそうです。ハイチ政府は本当に何を考えているんだ!、と皆が憤っていました。今回は、ドミニカ側(ダハボン市内)でも、ハイチ側のデモを応援するデモが起きていたそうです。
ダハボンでハイチの事について質問すると、いつも、ハイチには問題ばかり、あちらには電気も水もないから、常にデモばかり起きているんだ!というお決まりの答えが返ってきます。歩いて10分の距離なのに、隣の国というだけで、人が自由に行き来できないというだけで、ほとんど情報が入ってきません。
いつもメルカドで隣の地面に支援物資を並べて売っている、ハイチ人のお母さん達は大丈夫だろうか、と少し心配になりました。
同じ空間で働いているのに、国が違うだけで、こんなにも状況が違うなんて、考えたこともありませんでした。
ダハボンでは今まで想像もしなかったことに沢山出会います。
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